「参議院人事行政監視院+衆議院会計検査院」構想は、憲法改正を必要としません。そのため比較的に速やかな実現が期待できると思います。とは言え、改憲の際には、二院制と議院内閣制の維持を前提とするならば、「参議院に人事行政監視院を置く」というように、条文改正(日本国憲法第41条関係)で「行政監視」についてしっかり規定した方が良いと荒井達夫は考えています。
●「政府と官僚機構をつくる衆議院、それを監視する参議院」を徹底する
また、行政監視は参議院が中心であることを徹底するためには、法律案成立に関する衆議院の再議決要件を「3分の2」から「2分の1」に改めると同時に、会計検査院も参議院に置くことにするのが良いと思います。このような改正により、いわゆる「ねじれ」による国会の機能不全問題が解消するとともに、参議院議員は政党に所属していても、議決のために本来あるべき議論が行えないという党派性の問題を回避することが可能になるからです。さらに金銭面での行政監視(会計法の誠実な執行の監視)の大幅強化にもなります。人数的には人事行政監視院と会計検査院で参議院が2000人超の増員となり、行政監視のためのマンパワーとしては十分です。国民主権に基づく二院制と議院内閣制という仕組みの中で、「政府と官僚機構をつくる衆議院、それを監視する参議院」を徹底するアイデアである、と私は考えています。
●「行政監視に関する荒井・竹田説」に基づく憲法改正案(荒井私案)
さらに、憲法改正の際には次の規定を加えることを提案します。
①「国会は、国権の最高機関として、法律の誠実な執行を監視する責務を有する」(日本国憲法第41条関係)
②「すべて公務員は、全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、主権者である国民に対して誠実に法律を執行しなければならない」(憲法第15条関係)
③「すべて国民は、民主主義国家の構成員として、それぞれの自由を相互に承認するとともに、公共の利益に配慮しなければならない」(憲法13条関係)
④すべて国民は、政府の諸活動に関して知る権利を有し、政府は、その諸活動に関して国民に説明する義務を負う。(憲法第13条関係)
⑤「政府は、主権者である国民の知る権利に奉仕するため、公文書館を設置し、歴史資料として重要な公文書を適切に保存し、及び公開しなければならない」(憲法第13条関係)
これらは、「行政監視に関する荒井・竹田説」に基づく条文化(荒井私案※)です。「行政監視」を構成する①と②は、③を前提に成り立ちます。すなわち、③の「すべて国民は、民主主義国家の構成員として、それぞれの自由を相互に承認するとともに、公共の利益に配慮しなければならない」ところの「公共の利益」(=全国民に共通する社会一般の利益)のために働くのが、全体の奉仕者である公務員であり、それを見張る国会の活動が「行政監視」であるということです。
※2017.12.5参議院財政金融委員会 風間直樹議員発言PDFファイルを表示
※参考文献1 竹田青嗣『哲学ってなんだ 自分と社会を知る』岩波書店PDFファイルを表示
※参考文献2 工藤勇一・苫野一徳『子どもたちに民主主義を教えよう』あさま社PDFファイルを表示
また、④と⑤は、森友学園問題や日航機123便墜落事故、神戸連続児童殺傷事件など、近年社会的注目を集めている歴史資料として重要な公文書の不適切管理の問題を踏まえた提案です。特に森友学園問題における公文書改ざんは、「民主主義の根幹を揺るがす問題(大島理森衆議院議長談話)」と言われており、「行政監視」の観点から憲法規定を設ける必要があります。主権者である国民の知る権利と政府の説明義務を憲法に明記することは、「行政監視」の体制整備を促します。そして、公文書館を設置し、歴史資料として重要な公文書を適切に保存・公開する仕組みを整備する(※)ことは、知る権利に奉仕することにつながるという認識です。
※荒井達夫『公文書館法』法令解説資料総覧74号PDFファイルを表示
●議院内閣制で一院制では「行政監視」できない
なお、議院内閣制を維持したまま、二院制をやめて一院制にすべきだとの主張がありますが、これでは政府と官僚機構に対し第三者的立場からの適切な行政監視は不可能になりますので、論外と言うべきです(※1)。また、政府と官僚機構を統制する仕組みとしては大統領制が一番シンプルで良いと私は考えており、参議院憲法審査会の参考人意見陳述でも、そのように発言しました(※2)。この点の重要な指摘をしてくださったポール室山氏(米国在住ロビイスト)に感謝しております。
※1 2013.3.13参議院憲法審査会 西田実仁議員発言PDFファイルを表示
※2 2016.2.17参議院憲法審査会 荒井達夫参考人発言PDFファイルを表示