行政監視研究会

「行政監視」の定義

「行政監視」の定義ー荒井説

2022年11月9日、参議院憲法審査会において、西田実仁議員が「行政監視」の定義を荒井説により明らかにする発言をされました(※)。
※2022.11.9参議院憲法審査会 西田実仁議員発言PDFファイルを表示
※2016.2.17参議院憲法審査会 荒井達夫参考人発言PDFファイルを表示

参議院規則第74条第15号は、参議院行政監視委員会の所管として第一に「行政監視に関する事項」と規定しています。この「行政監視」は、民主主義の原理に基づき、公共の利益の実現のために主権者国民に代わって国権の最高機関である国会が行う活動です。その定義を国会議員が自ら明らかにするのは当然です。また、「行政監視」を定義することは、国会の議員と職員という実務家が切り開く新しい学問分野であることを証明するものであり、極めて重要かつ画期的な国会発言と言えます。「行政監視」の定義は議論の要であり、その明確化によって、行政監視とは→参議院とは→選挙制度とは、という思考の流れで、あるべき統治機構の説明が合理的にできるようになる、と荒井達夫は考えます。国民主権に基づく二院制と議院内閣制という日本国憲法の仕組みの中で、参議院の役割を「行政監視」と考えれば、それに対応して選挙制度も決まってくるということです。これは、学者の誰も指摘していない重要論点であると思います。以下、西田議員発言の一部を掲載します。

「第一に、行政監視とは何か、定義についてです。驚くべきことですが、学説で行政監視の定義がないというのであります。これは大変におかしな話でありますので、この憲法審査会の場で定義を明らかにすることにしました。行政監視とは、簡単に言えば公務員の働きぶりを見張ることを意味しますが、これを憲法規定と法令用語に合わせて言えば次のようになります。行政権の行使について国会に対し責任を負っている内閣が、法律を誠実に執行するという憲法上の義務に違反していないかどうかを国会が常時注意して見ること、これが行政監視の定義ですが、更に本質的な説明がされています。公共の利益の実現のために、主権者である国民に代わって国権の最高機関である国会が政府と官僚機構の活動を法の誠実な執行の確保の観点から常時注意して見ること、これが日本国憲法の下での行政監視であると。以上は、2016年2月17日、参議院憲法審査会で参考人出席した荒井達夫元参議院憲法審査会首席調査員、現千葉経済大学特任教授によるものです。荒井説による行政監視の定義と本質的な説明で、行政監視はどのような活動をどのような体制で行えばよいか具体的に考えられるようになります。例えば、行政監視強化において、衆参でどのような役割の違いがあるかという非常に重要な問題を議論できることになるわけです。
  第二に、行政監視と参議院の選挙制度の関係についてです。参議院を行政監視のための院とすることで選挙制度との関係が明らかになります。投票価値の平等と全国民を代表する議員を基本条件とする選挙制度です。行政監視は、公共の利益の実現のために、主権者である国民に代わって国権の最高機関である国会が行う活動であるからです。この点、参議院を地方のための院であることにして、一票の較差拡大も認めようとする意見も一部にありますが、疑問です。参議院が地方のための院なら、衆議院は国のための院としなければなりませんが、衆議院で国の問題だけに限定する議論が可能とは考えられないからです。その必要性もなく、コロナ対策一つ取っても不合理で、公共の利益に反する結果を招きます。また、一票の較差拡大を認めることを基本とする考えは、主権が国民にあるとの憲法思想に反します。全ての国民は憲法の下に対等の条件で政治参加が保障されるというのが民主主義の基本の考え方であり、そうでなければ本当の主権在民とは言えないからです。」


「行政監視研究会」は、元国会職員で大学教員の荒井達夫が主宰する「行政監視」に関する研究会です。
「行政監視」は、国会の議員と職員という実務家が切り開く新しい学問分野です。
このホームページ(2022.8.26公開)では、「行政監視」に関する最先端の国会論議を紹介します。

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