行政監視研究会

国葬と行政監視

2022年12月10日、安倍元総理大臣の「国葬」について検証してきた与野党の協議会(衆議院議員運営委員会)は報告をまとめ、その中で今後国葬を実施する場合について「国会が的確な行政監視を行う機会が確保されることが望ましく、政府は適時・適切な情報提供を行うべきだ」と指摘しています。これは、先の「行政監視」の定義に関する西田実仁議員の発言(参議院憲法審査会)と併せて見れば、国会が全体として「行政監視」の重要性(本当に必要な行政の監視とは何か)について本気で考え始めたことを示している、と荒井達夫は理解しております。

安倍元総理の「国葬」については憲法違反との指摘もあり、「行政監視=法律の誠実な執行の監視」と「憲法保障=憲法の誠実な執行の監視」の観点から検討されるべき問題であると考えます。「主権者国民に対して」法(憲法と法律)が誠実に執行されているかどうかが最重要論点であり(※)、政府による適時・適切な情報提供が問題になるのはそのためです。また、国葬のあり方を「行政監視」の重要問題として組織、人、金の観点から十分に議論できる場は、国会(特に参議院)をおいて他にありません。衆議院の報告に対しては議論の量も質も不十分であるとの批判が多くあり、今後さらに参議院で調査研究が行われることが期待されます。「参議院行政監視研究所」の創設が望まれるところです。
※2017.12.5参議院財政金融委員会 風間直樹議員発言
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なお、私は、安倍元総理の国葬については、内閣が「主権者国民に対して」誠実に法(憲法と法律)を執行することにならないと考えます。国葬のような、立法、司法、行政の三権が関わる超重要な国家の行為には当然そのための法律が制定されるべきであり、それをせずに国民の過半数が反対と見られる中で内閣が閣議決定で国葬を強行することは、「主権者国民に対して」明らかに不誠実な法の執行であり、公共の利益に反すると言わざるをえないからです 。これは憲法第73条(法律の誠実な執行義務)と第99条(憲法尊重擁護義務)に違反します。


「行政監視研究会」は、元国会職員で大学教員の荒井達夫が主宰する「行政監視」に関する研究会です。
「行政監視」は、国会の議員と職員という実務家が切り開く新しい学問分野です。
このホームページ(2022.8.26公開)では、「行政監視」に関する最先端の国会論議を紹介します。

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